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プチおっさん医師の奮闘記!

とある病院の中間管理職にある中年医師(勤務医)の日常を徒然に綴るブログです。今や社会的弱者になりつつある勤務医の日常をありのままに公開します。

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闘病記(1)

今日、他の病院から転院してきた患者さんとその病院との検査計画や治療方針に若干の違いがあり、それを説明した時に
”先生は検査や治療をする側であり、受ける側じゃないから患者の気持ちはわからない”といった主旨のことを言われた。
医者をしているとよく言われる言葉である。

また、あるきっかけで、病気と闘っている女の子のブログを見た。

この2つのことがあって、自分が病気と闘っていたことを久しぶりに思い出した。

今から約10年前、自分の健康など省みず、24時間、仕事と勉強に割いていた。本当にあの頃は一日中病院にいた。だから、毎日しんどかったが、睡眠不足のせいであり、まさか病気に罹患しているとは思っていなかった。
ある日、母に検査をうけるようにひつこく言われたので、軽い気持ちで採血検査をした。
あの時のことは今も鮮明に覚えています。同期と軽い気持ちで
”病気になってたら、しばらく休めるね”
と冗談を言いながら、PCの検査画面を見ると、赤い字で異常値が記載されていた。そう病気に罹患していたのである。
その瞬間時が止まったのを覚えている。

即入院となった。自分の働いている病院に入院するのは嫌なものである。隣の病室が自分の患者だったりする。スタッフにも気を使うし。
胃カメラや生検などありとあらゆる検査を受けた。
だから、今患者さんに検査する時自分の体験談をいえるので貴重な体験をしたと思っている。
結局、確定診断がつき、ある病気に罹患していた。急性期に見つかることは少ないので、急性期に見つかった自分の寛解率は当時不明であった。慢性化すると寛解率は極めて低いものであった。
職業柄、病気のことは誰よりもよく知っている。また、いろんな文献をあさることもできる。しかし、調べれば調べるほど冷たい数字しかみることができない。自分のその後の人生が計算でき、こうなってこう死んでいくんだといつも考えていた。
周囲の人間が、時々慰めを言ってくれるが、愛想笑いを浮かべるのが精一杯で慰めにならなかった。
そして治療が始まった。けっこう侵襲の高い治療で、薬を打った日は食欲がなくなり、高熱がでてヘトヘトであった。夜病院のベッドに横たわり、白い天井を見ていると不安とあせりとこうなってしまった自分の運命を恨んだ。
クリスマス、正月は病院のベッドの上だった。
そして、髪の毛が抜け始めた。朝起きるのが本当に嫌だった。起きると枕元に髪の毛が束になって抜けているのである。
いろんな人が慰めの言葉を掛けてくれたが、ただ一人教授だけ
”治る可能性の低い病気”と母の前ではっきりと言われた。
その時、目が覚めた。
”病気にかかったことをいくら恨んでも後悔しても、病気にかかった現実は変わらないし、病気が良くなることもない。それよりその現実を受け止め、治るということを信じて、今できることしよう。塞ぎこんで、全て病気のせいにして何もしないことは人生において大損害だ。病気と上手に付き合う方法を探そう。”と。

程なくして、仕事に復帰した。薬の打ち方を変えてしんどい時間帯を寝ている間にするようにした。医者の世界、同期はライバルである。特に、若い頃は。うざい同期から厭味なこともされたけど、気にせず、自分のできることをやった。

その後、いろんなことがあった(それはまた書くかもしれないです)。
でも、病気から逃げなかった。
そして完全寛解して現在に至る。

僕はいつも若い患者さんに慰めの言葉はあまりかけない。自分の体験から、慰めは所詮効き目は数分である。長期効果はない。冷たい言い方かもしれないが
”病気にかかったことは仕方ない。病気を冷静に受け止め、どう付き合い克服していくか”
これが重要なことなんだ。
病気にかかれば全ての幸せが吹き飛ぶか、そうでは決してない。
病気にかかったからわかることもある。体験できることもあるのだ。
治ったから言えるんだと言われるかもしれない。確かにそうかもしれない。
でも、塞ぎこんでも何も変わらないと思う。

現実を受け止め、病気が治ることを信じて上手に付き合ってください。そのかわり、我々医療従事者は全力で病気の治療にあたります。

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一番言ってほしい言葉

なんと言って良いのかわかりません。
読み終わったら涙が出てきました。

私の病気なんて比べ物にならないですね。
直接的に命に関わることじゃないですもん。
めそめそしてて、情けないです。

先生(この呼び方でも良いですか?)のような人が医師をされているのがすごく嬉しいです。
私の主治医がどんな方なのかは、まだちょっと掴めていませんが、同じように考えて発言してくれてるのかな?そうだったらどれだけ救われるだろう・・・と考えさせられました。

やっぱり先生は冷たくなんてないですよ。
そうやって自分の経験を踏まえて話してくださる人が冷たいなんてことありません。
どんなお声で、口調で話されるのかは分かりませんが、きっと先生の患者様は深いところで汲み取っていると思います。


Moccho  2007/03/12(Mon)23:23:33

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プロフィール

HN:
プチおっさん
性別:
男性
職業:
勤務医
自己紹介:
あっという間に卒後10年以上過ぎ、気がつけばおっさんになってしまった勤務医です(自称ぷちおっさん)。"医者になればバラ色の人生が待っている!!"と思い、医者になるにはなったけど、現実は無残で灰色の人生を送っています。病院の中では中間管理職-つまり,雑用処理係を拝命され日々、医療とは違うところで苦労をしております。

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